2006年9月28日 (木)

【孤島パズル】有栖川有栖


孤島パズル

オススメ度 ★★★★☆

『英都大学推理研初の女性会員マリアと共に南海の孤島へ赴いた江神部長とアリス。島に点在するモアイ像のパズルを解けば時価数億円のダイヤが手に入るとあって、早速宝捜しを始める三人。折悪しく嵐となった夜、滞在客のふたりが凶弾に斃れる。救援を呼ぼうにも無線機が破壊され、絶海の孤島に取り残されたアリスたちを更なる悲劇が襲う!』(東京創元社のHPより)


絶海の孤島という、ミステリー界では、定番の設定の中で連続殺人がおこるのだが、何となく、序盤で犯人が分かってしまい、ラストでも「あぁ〜やっぱりそうか」って思ってしまう。残念。サプライズ的な、予想を裏切る展開が欲しい。

それに、モアイのパズルに関する部分は、あっさりしすぎているような感じがしました。話の核になる部分だけに、もう少し複雑でもよかったような気がします。あと、月光ゲームでも気になったのですが、どうも、恋愛要素が入りすぎているような気がします。アリスが“学生”なので、仕方がないのかもしれませんが。。。 

そんな不満点はあるものの、この作品は、学生アリスシリーズ第1作目の月光ゲームより、断然できは良い。新登場人物のマリアは素朴な、古き良き日本女性って感じがするし、南国のゆったり時間が流れる雰囲気も伝わってくる。「わざわざ、殺人事件なんて起こさなくてもいいのに」って思ってしまいました。それじゃあ、話にならないか(笑)

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2006年9月24日 (日)

【殺人の門】東野圭吾


殺人の門

オススメ度 ★★★☆☆

「どうしても殺したい男がいる。その男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。あいつを殺したい。でも、私には殺すことができない。殺人者になるために、私にはいったい何が欠けているのだろうか……」角川のHPより。


計画的殺人と衝動的殺人。殺人には2種類あると思うが、この作品を読む限り、計画的殺人は難しいのかなとも思う。殺人の計画を立てることは簡単。でも、それを実行するまで殺意を持ち続けるには、膨大なエネルギーが必要で、さらに最後の一線を超えるにはもっと大きなエネルギーが必要だと思うから。今後、ミステリー小説などで書かれる殺人の動機に対して、「本当にそれで十分なの?」と思ってしまいそうです。

いじめ、女、裏切り。。。殺人の動機にはいろいろ考えられる。この作品では、“騙され続けてきた奴が抱く、騙す側に対する恨み”が主人公にとっての最大の動機であるが、結局、それも実行に移す決定的なものになっていない。むしろ、「あいつを殺してやる」という思いが、生きるためのモチベーションにさえなっている。

いつやるのか、本当に実行できるのか、それが気になってページをめくる手が止まらなかったので、それだけ作品に引き込まれたということなのかもしれません。この作品、読んでいる最中に、何とも言えない不愉快さを感じた。読後感もあまり良いとはいえない。この読後感の悪さは、「白夜行」のものに近いような気がします。

欲を言うと、騙す側の「倉持」の視点からの心理描写がもう少し欲しかったかな。

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2006年9月14日 (木)

【夜の果てまで】盛田隆二


夜の果てまで

オススメ度★★★☆☆

私は普段、あまり恋愛小説は読まない。別にそんなに読みたいとも思わないし。
でも、この「夜の果てまで」は、ちょっと(いや、ちょっとどころかとても)読んでみたいと思った。

どうしてそんなに読んでみたかったのかというと、私もこの「夜の果てまで」と似た状況を経験したことがあったからです。ただし、私の場合は、人妻ではなく年上のシングルマザーで、ちょっと違うのですが。。。

さて、この作品は、年上の女性(既婚)と大学生の恋愛(不倫)物語。
主人公、俊介は新聞社への内定をけってまで、彼女との生活を選んでいます。私は、“現実”を考えてしまったので、とてもそんなことをする勇気はなく、結局、仕事を選びました。ただ、実際には無理でも、何もかも捨てることができたらって、考えたことがあるのも事実。だから、少しうらやましいなと思いました。

かなり昔のことなのに、日常生活のふとしたきっかけで、当時のことを思い出すことがあります。そんな時には、もし、あのとき彼女を選んでいたら、今とは違った人生だったろうな…って考えたりする。私にはその時の選択(彼女を選ばなかった)が正しかったのか、間違っていたのか分かりません。“あれで良かったんだ”って自分で思えるのなら、それが正解のような気もするし、そもそも、答えなんて無いんじゃないって思ったりもする。

この小説の主人公は私が選ばなかった道を、私の代わりに経験してくれたのかもしれません。

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2006年9月10日 (日)

【マレー鉄道の謎】有栖川有栖


マレー鉄道の謎

オススメ度★★☆☆☆

う〜ん、何て言ったらいいのかなー?
読み終わって、モヤッとしたものが残る作品でした。私は以前、推理小説は、「作家 vs. 読者の頭の格闘技だ」と言ったことがあるが、この作品は、格闘以前に同じリングにあがることすらできなかったな〜と思ってしまいました。

というのも、私の洞察力と、文章読解力が足りないせいかもしれませんが、読者が独力で犯人に到達するための手がかりがなさすぎるのです。だから、何となく途中から、「惰性で読まされている」という感じを受けてしまいました。有栖川作品では、「どうやって犯行を行ったのか」に重点が置かれがちであることを考えると、やっぱり読者に対していくつか手がかりを残すべきではないでしょうか?

やはり、私は有栖川有栖は短編の方が良いものが多いのではと思いました(スウェーデン館の謎は別)。
でも、作家アリスの発言と、それを突っ込む助教授火村との掛け合いは読んでいて面白いです(トラウマ=ハリマオ・ホースや、映画スター=ピクチャー・スターは笑った)。

なんか最近、有栖川有栖作品に対して、辛口な評価になっていますが、有栖川有栖は好きな作家です。

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2006年9月 8日 (金)

【君の名残を】朝倉卓弥


君の名残を

オススメ度 ★★★★☆

「四日間の奇蹟」の朝倉卓弥作品。四日間の奇蹟が意外と良作だったので、期待して読んでみました。

現代に生きる友恵、武蔵、志郎の3人の若者が、源平合戦の鎌倉時代にタイムスリップ。鎌倉時代で第二の人生を歩むことになる。はじめは3人のストーリーがパラレルに進むのだが、やがてそれぞれが接点を持ちつつ、交差する。

タイムスリップを使い、時代を超えて様々な人の人生が交錯する本作品は、手塚治虫の「火の鳥」を彷彿とさせる壮大さをもっている。そんな壮大なスケールだと、中身が薄くなりがちだが、この作品は中身もしっかりしている。

異時代に強制的に“飛ばされた”彼らが、そこで、何に苦しみ、何に幸せを感じ、どう生きていこうと考えたのか。平家物語をベースにして描かれる「彼らの生きる道」は、読んでいて時に力強さを、また時には儚さをも感じさせるものでした。特に友恵と武蔵、彼ら二人の行動には心打つものがあります。

「君の名残を」。読んだ後に、「作品の名残」をいつまでも楽しんでいたいと思うような作品です。

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2006年9月 5日 (火)

【オーデュボンの祈り】伊坂幸太郎


オーデュボンの祈り

オススメ度 ★★★★★

伊坂作品はこれまで、アヒルと鴨のコインロッカーや重力ピエロなどを読んできたが、正直、言われているほど良いとは思わなかった。でも、このオーデュボンの祈りは別格!!私の伊坂作品に対する評価が、何倍にも跳ね上がるきっかけとなった作品です。

独自のルールをもつ、閉ざされた空間である“孤島”が舞台。そこには「未来を予知できる、喋る案山子」、「人殺しが許されている桜という人物」など、独特の個性を持つキャラクターが多く登場します。そんなキャラクターは、現実にはあり得ないのですが、この作品の中ではあたかも、実際に存在しているかのように生き生きと、リアルに描写されている。

だから、子供の頃に見知らぬ地を訪れるときにワクワクしたような、そんな興奮を感じながら読んでいました。ミステリーというよりは、ファンタジー小説かなと思います。ページをめくる手が止まらないほど、没頭して読んでました。まさに伊坂幸太郎、恐るべし。

読み終わった後に、さわやかで爽快な気持ちになるのは、伊坂作品の特徴ですが、この「オーデュボンの祈り」の場合は、風呂上がりによく冷えたビールを飲んだような、最高の爽快感を味わえる作品ではないでしょうか。

最後に、「この島に欠けているもの」。作品の中だけではなく、「自分に今欠けているもの」、「今の社会に欠けているもの」etc... 「いろいろな局面で欠けているもの」について考えてしまいました。

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2006年9月 3日 (日)

【Fake】五十嵐貴久


Fake

オススメ度★★★☆☆

私にとって、初の五十嵐貴久作品。ポーカーで10億をだまし取ろうとするコンゲーム。様々なテクを駆使して大金をだまし取ろうとする側と、騙されまいとする側の攻防。そして最後に待つ大仕掛け。

話自体は、まさに映画「The Sting」のような感じ。しかも、最後のオチの内容までほとんど同じ。だから、The Stingをみたことがある人には、それを小粒にした作品に映ってしまうと思うし、どうしても、二番煎じの感は拭えない。っていうか、逆に言うとそれだけ「The Sting」が偉大だということ。

でも、話が分かりやすく、内容について深く考えることもなかったので、サクサクと読めてしまいました。エンターテイメント作品としては合格ではないでしょうか。なので、可もなく不可もなくといったところで星3つ…

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2006年8月29日 (火)

【約束の冬】宮本輝


約束の冬(上)

オススメ度 ★★★★☆

「十年後の十二月五日の朝、地図に示したところでお待ちしています。お天気が良ければ、ここでたくさんの小さな蜘蛛が飛び立つのが見られるはずです。ぼくはそのとき、あなたに結婚を申し込むつもりです」(上巻の帯より)。

蜘蛛が飛ぶ!? 帯のこの文章を読んで、最初に感じたことでした。どういうことか知りたくて、その興味だけで、買ってしまいました(^^;

子供の蜘蛛が空中に糸を出し、うまく風に乗って飛び立ち、自分の世界への巣立っていく。。。そういう現象を「飛ぶ」と表現したのでしょう。学生を卒業して、新たに社会人として、自分の世界を確立するために巣立っていくという、今の私の状況を表しているかのようです。普段はあまりお目にかかりたくないクモですが、なんか応援してました。

そんな空飛ぶクモの話は、俊国と留美子の「約束」にまつわるエピソード。他に、桂二郎と俊国の祖父、小巻と留美子の間にも「約束」が。この作品は「約束」がテーマになっている。

「約束の冬」を読んでいて思ったことは、人は他人との約束を拠り所にして、生きていくのかもしれないということ。そう考えると、「約束を守る」って、人との繋がりを感じられる、すごく素晴らしいことなんじゃないかな。

ラストは、ハッピーエンドになりそうな予感を残しつつ終わり、ちょっと中途半端な感じがするのですが、読む人が自分の中でラストを作っていけばいいのかなと思います。

宮本輝の本には葉巻、高級割烹、古典文学など、シブい大人を感じさせるものが登場する。意外とそういうシブさがいい味を出していて、好きだったりする。特に徒然草の一節は心に響くものでした。

単行本でも文庫でも、結構な長さの小説で、しかも、中盤はやや単調になるので、飽きてくるかもしれません。でも、何か一つでも(一文でも)残るものがあれば、読んでよかったと思えるのではないでしょうか?

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2006年8月27日 (日)

【葉桜の季節に君を想うということ】歌野晶午


葉桜の季節に君を想うということ

オススメ度 ★★★★☆

これ、2004年版「このミステリーがすごい」の第1位になった作品です。

終戦のローレライが同年版の2位なのですが、じゃあ、1位はどれだけ面白いんだ?と思い手に取って、早2年。ようやく最近になって、読み終わりました。

単なるハードボイルドものかなと思って読んでいましたが、途中から、「文章表現が何かおかしい」と、何とも言えない違和感を感じていました。どうしてそんな違和感を感じたのかは、最後に待っていた大どんでん返しによって、納得するのですが、この大どんでん返しは衝撃的でした。やられたって感じですね(^^;

「えぇ!?、ちょっと待って、今の何? 何が起こったの?」って思い、数ページ前から、何度も読み直す必要があるほどです。 ただし、このどんでん返しがどれほど衝撃的で面白くても、このミス1位はちょっと納得できませんでした。ミステリー的な要素(フーダニット&ホワイダニット)があまり感じらず、読者と著者の頭脳戦という、ミステリー小説の醍醐味が味わえなかった気がします。まぁ、面白いので何位でもいいのですが。

「葉桜の季節に君を想うということ」。ミステリー小説なのに、恋愛小説っぽいタイトルがついていて、なんかビミョ〜なんですが、逆にそれが印象に残るための戦略なのかなとも思いました。

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2006年8月26日 (土)

【月光ゲーム】有栖川有栖


月光ゲーム―Yの悲劇’88

オススメ度 ★★☆☆☆

「あらすじ」夏休みに、ある山のキャンプ場にやってきた17名の大学生。楽しいひとときになるはずだったのだが、突然、火山が噴火し、帰り道を断たれてしまう。閉ざされた空間内に閉じ込められ、さらに最悪なことに、次々と人が殺されていく。被害者は"Y"というダイイングメッセージを残して。犯人は誰なのか、そしてその動機は? 

有栖川有栖の長編デビュー作。登場人物が大学生なので、自分の学生時代を思い出しながら読んでいたが、スウェーデン館の謎とか、マレー鉄道の謎と比べてしまうと、やっぱり物足りない。本当に、火山を噴火させる必要性があったのか? ミステリーに動機に結びつかない、恋愛話は必要か? 犯人の動機とラストはあれで良いのか? そもそも登場人物が多すぎないか?etc... 

不満はたくさんあるものの、長編デビュー作だから、仕方が無いなと思ったりもする。まあ、この月光ゲームに続く作品(孤島パズル&双頭の悪魔)が秀逸なので、これはこれでいいのかな。

この作品、有栖川有栖の入門編と言えなくもないが、できればスウェーデン館の謎やスイス時計の謎を読んでほしい。こっちの方が面白いです。

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